本当は危ない国産食品

 「本当は危ない国産食品」という本が新潮新書で出されています。著者はノンフィクション作家の奥野修司さん。ネオニコチノイド農薬の問題、除草剤の問題などを詳しく書いた本です。世界各国が、使用禁止にしたり、制限したりしている中で、日本だけが突出して規制緩和をしている状況が分かります。小田原でも市民レベルで、有機食品を広げる運動をする必要があると思います。

ネオニコチノイド農薬とは?

  異変はミツバチから始まった

 ネオニコチノイドとは、新しい(ネオ)ニコチン様物質という意味で、タバコに含まれるニコチンに似た作用を持つ農薬のことです。その大きな特徴として、神経毒性、浸透移行性があります。
 まず、神経毒性について。人も昆虫も神経系の基本は同じで、きわめて複雑な神経系と神経伝達物質の働きが生命維持に関わっています。そして神経の伝達には、神経伝達物質といわれるアセチルコリンやグルタミン酸などが必要です。ネオニコチノイドは、アセチルコリンの受容体に結合し、神経伝達を撹乱するのです。
 次に、浸透移行性について。これは、農薬が根から吸収されると作物の葉や茎、花などのあらゆる部位まで毒が染み渡るという意味です。影響は長時間持続し、洗ってもなかなか落ちないのです。
 人間の脳の中にもアセチルコリン受容体はたくさんあります。ネオニコが人間の脳神経に影響することが明らかになっていけば、常時摂取しているだけに深刻な事態になりかねません。

農薬が検出された飲み物・野菜は?

 クイズを2つ。
1、次の国内のスーパーやコンビニで売っているお茶や飲み物のうち、ネオニコが検出されたものはどれでしょう?
 A、茶葉 B、野菜ジュース C、ペットボトルの緑茶 D、麦茶 E、ウーロン茶
正解は、A、B、Cです。D、Eは焙煎(熱を加えて煎ること)しているから出ないのです(ただし、中国産のウーロン茶は重金属も検出されるので要注意)。
2、次のうち、ネオニコが検出されたものは?
 キュウリ ほうれんそう ナス トマト キャベツ
正解は、全てです。東京都の調査ですが、ニンジン、ブロッコリーなどは不検出でした。

世界と日本の大きな差!

 このネオニコチノイド農薬。最近では人間にも神経毒性があることが分かり、EU各国や韓国、ブラジルなど使用を禁止する国が相次いでいるのですが、なぜか日本は緩和しているのです。
 例えば、お茶の残留農薬基準値です。右上の数字を見てください。日本で許可されている7種の農薬の基準値です。

 ジノテフラン   日本 25000 EU 10 →2500倍
 チアメトキサム  日本 20000 台湾 1000→20倍
 チアクロプリド  日本 30000 台湾 50 →600倍
 アセタミプリド  日本 30000 EU 50 →600倍
 クロチアニジン  日本 50000 EU 700→71倍
 イミダクロプリド 日本 10000 EU 50 →200倍
 ニテンピラム   日本 10000 EU 10 →1000倍
                     ※単位はppb
 なぜこんなに日本は甘いのでしょうか。東大大学院農学生命科学研究所の鈴木宣弘教授は「アメリカの政権に強い影響力を持つ企業が、他の国では規制が厳しく売れないので、アメリカ政府に働きかけ、日本がアメリカの要求を受け入れているから」と言っています。
 ネオニコは子どもたちの脳の発達に影響する可能性もあります。発達障害や喘息、アレルギー疾患、自閉症などの日本での増加の原因になっているかもしれません。

日本の状況を変えるためには?

 なぜ日本だけが農薬を大量に使うようになったのか、それは消費者が農薬のことに無関心だったからです。ここ数年、アメリカやヨーロッパでは有機食材の生産が飛躍的に増えています。農薬は怖いから、たとえ高くても有機農作物を買うという価値観の転換があったからです。フランスではアマップ(AMAP)という非営利団体の消費者グループが増えています。地域の小規模有機農家の育成を目的に、農家と消費者が直接契約することで支援しているものです。
 小田原でもこのようなグループが作られていけば、消費者にとっても有益だと思います。
 とにかく、日本では農薬のことを知らない人が多いので、まずは知らせることです。知る人が多くなれば、状況は変えられます。
 このままでは、危険な農薬の人体実験をしている国になってしまいます。

2021年04月01日