香害は公害~甘い香りに潜むリスク~

 今回は、洗剤・柔軟剤に含まれる「香りマイクロカプセル」の問題を考えてみたいと思います。

「6回着ても香りが新鮮!」

 このように喧伝されている柔軟剤があります。なぜそんなに長持ちするのでしょうか。それは、香り(化学物質)成分が、1キャップに数千万から1億個入っているマイクロカプセルを使っているからです。このマイクロカプセルが、洗濯時に繊維の中に入り込み、擦れるたびにカプセルが破壊されて香りが広がるため、香りが持続するのです。

香害で苦しむ人が増加

 この香りが体内に入り込むことによって、体調不良を起こしている人が増えています。化学物質過敏症と言われる人たちです。「職場のトイレや更衣室、休憩室などに充満するニオイで苦しくなって仕事ができなくなった」「保育園の先生の香料のために子どもが喘息になった」「高校生の子どもは学校に漂う香料のニオイで休学中。小学生の子どもは学校の柔軟剤のニオイで腹痛を訴える」「接客業をしていたが、お客やスタッフの洗剤・柔軟剤・香水などのニオイで体調不良になり、仕事を辞めた」などなど被害が起きています。
 これは他人ごとではありません。花粉症と同じで、化学物質が体内に蓄積されることで、ある日突然発症するので、誰にでも起こる可能性があるのだそうです。

甘い香りに含まれる毒

 良い香りなのに具合が悪くなる人がいるのはなぜなのでしょうか。それは甘い香りに毒が潜んでいるからなのです。香料には、アレルギー性、神経毒性、変異原性、発がん性、内分泌かく乱作用などがあるのです。
下水に放出され、海に流出

 香りだけの問題では済みません。マイクロプラスチックは環境に放出され、生体内にも取り込まれます。人の肺に入り込むと、喘息、気管支炎、肺がんなどを引き起こします。洗剤や柔軟剤に使われたマイクロカプセルの80%は、洗濯のたびに下水に放出され、海に流れ出ます。その結果、800種類以上の海洋生物(海鳥・魚・貝・ウミガメ・クジラなど)がマイクロプラスチックを摂食しているとのことです。もちろん毒性がありますから、生物組織に炎症が起こっています。そして、食物連鎖を通して、汚染は生態系全体に広がっています。

EUでは「禁止すべき」

 EUでは専門機関の欧州化学物質庁(ECGA)が、2019年1月「意図的に製品に入れられたマイクロプラスチック」の規制に関する提案を欧州委員会に提出しました。そこでは、香りマイクロカプセルについても、5年の猶予は与えているものの「禁止すべき」という姿勢を打ち出しています。

 EU加盟国では、オランダが2016年末から、フランスでは2018年からマイクロプラスチックを含む化粧品等の販売を禁止しています。デンマーク、アイルランド、イタリア、スェーデンでも同様の販売禁止をしています。現在はEU外であるイギリスも2018年1月から製造禁止、同年6月からは販売禁止となっています。

2021年06月01日